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A様邸(新潟県長岡市)
<延床面積>
206.89m2(62.58坪)
<構造>
木造軸組工法
新潟県中越地震での大きな被害は、記憶に新しい方も多いと思います。 A邸は、その地震で壊れた住まいの再生であり、 思い出のアイテムを新しい住まいに取り込むことに重点が置かれました。 亡くなられたお母様がいつも座っていた縁側が再生され、「母が座っているようだ」と娘さんはおっしゃいます。 この縁側を中心に、この家の全体像が決まっていきました。 旧宅の古材や照明器具、欄間・建具などを生かし、愛着のあった旧宅がしのばれるつくりとなっています。
A様のご希望により、広い庭を生かした、四季の移ろいが感じられる和風の伝統的な住まいとなりました。 ただ、『伝統』だけにとどまらず、新しいけれど伝統的、伝統的だけれど新しいといった感覚を取り入れたといいます。 家族の気配を感じられる和の空間に、プライバシー重視の空間を組み合わせ、個室・半個室・パブリック・客間のつながりを考えた空間構成。 何といっても家のあらゆるところから素晴らしい庭を眺めることができることが特徴です。
外観は既存の庭にしっとりとなじむ落ち着いた和風の佇まい。 構造は伝統的な在来工法で、太い丸太材を用いています。 平屋にもかかわらず、複層させた屋根によって外観に変化をもたせ、小屋裏の空気層を大きくとっています。 内装では、気の素材感を出すことにこだわりました。特に県産材「越後杉」を多用。縁側には、旧宅で使われていた無垢板を用いています。 地震で失われた家族の思い出や旧宅への愛着を、今後につなぎとめることができる、そう感じさせる住宅です。
縁側越しに広い庭を見渡す
飾り棚をしつらえた格式ある玄関
本格的な作りの和室床の間
旧宅の材料をこの家ではさまざまなところに使っています。 玄関の欄間は、旧宅の居間にあったもので、縁側の照明器具も再生させたもの。 縁側と和室を区切る障子にはめこまれたガラスも、以前からあったもので、趣が感じられます。 蔵の帯戸に使われていたケヤキの一枚板も壁の装飾として再利用されています。
一体となっているリビング・ダイニングの開口部には庭の緑が広がる
ダイニングの脇の坪庭は、旧宅の瓦を使ったデザイン
中越大地震で我が家は崩壊するという被害を受けました。 思い出がたくさん詰まり、愛着のある家だったので、ショックは大きかったです。 そこで出逢ったのが三善建築設計事務所様でした。 何とか思い出を再生したい、もう一度家族の絆を取り戻したい。 私達の願いはただそれだけでした。
もう二度と感じることのできない『思い出』となってしまった我が家の再生に、とても感動しました。 随所にちりばめられた旧宅の面影が、まるで災害などなかったかのように感じさせてくれます。 私達家族の絆をより深いものにしてくれたことに、とても感謝しています。
新建新聞社発行 「和モダン」掲載